目の前に血圧計がおいてある。
早速検診してみると、最高血圧:最低血圧:脈拍数=104:70:65でやや低血圧。
退院してから血圧降下剤(メインテート:田辺三菱製薬)を服用している。それ以前の120:80から10程低下しています。

ところで、今年4月に日本人間ドック学会と健康保険連合会が血圧の新基準値を発表して
医療現場で混乱が起きたことは記憶に新しい。
私見ですが、それは混乱ではなく基準値の定義自体が曖昧なのが最大の問題だと思います。
従来の血圧の基準値は、収縮期血圧(上)が140から拡張期血圧(下)が90というものでした。
それ以上が高血圧です。
今回の発表で正常値の範囲が、上が147で下が94となったわけです。今まで高血圧に分類されて血圧降下剤を服用していた方は金を返せと言いたいところです。
実は、70歳以上の日本人の高血圧降下剤服用率は何と45%です。
年間約1兆円が薬品会社や医療機関に転がり込みます。薬品会社の最大のドル箱薬品です。
そもそも、戦後一貫して日本人の日本人による日本人のための血圧基準値の議論が行われてこなかったことに本質的な問題があります。
その背景に、日本の医学会や医師達の疫学的思考の遅れがあると思っています。
年齢と共に血圧の正常範囲の基準値は上昇するのは小学生でもわかる話です。
最近まで20歳の女性も80歳の男性も基準値は140〜90だとしていたことは、リンゴとオレンジを比較しているようなものです。
それが現在までの血圧基準値の考え方です。
今回その基準値が147から94と変化しただけです。
例えば、一般的には血管硬度検査としては脈波伝播速度検査(PWV)や足関節上腕血圧比検査(ABI)があります。
血管のしなやかさや血管のつまり具合の検査を行う検査です。
両検査とも年齢を横軸に硬度を縦軸に配置するとなだらかな右肩上がりのスローカーブを形成します。
即ち、加齢と共に血管がプラークなどで狭小化し、しなやかさが失われることは当然のことです。
つまり、加齢とともに基準値範囲を変えているのです。
それでは、何故血圧の基準値は年齢にかかわらず全て同じ数値であるのでしょうか?
理解に苦しむところです。
戦後、日本は、自分で血圧基準値を設けず、WHOからの請け売りでしてきました。
WHOは世界保健機構と訳され本部はジュネーブとはいえ国連の下部組織のようなものですから、様々な国際的な活動を行っています。
医療や医学の遅れていて基準値を作れないような後進国にはWHOの基準値の意味は重要です。
しかし、日本は高齢化社会に向かう先進国です。
今こそ、厚労省は、欧米人とも骨格も体系もDNAも異なる日本人の性別年代別の血圧基準値を設けるべきだと思います。
1970年のWHO高血圧の定義 160〜95以上 日本 165〜95以上
1993年のWHO境界域高血圧の定義 140〜90以上
1993年の日本の高血圧定義 日本 140〜90以上
1993年のWHOの境界域高血圧の定義を日本医師会や薬品会社が勝手に解釈していたと疑われてもおかしくないと思います。
WHOの基準値を導入する以前は、簡単に年齢プラス60以上が高血圧の目安だったようです。
私の場合、63歳ですから上の153以上が高血圧に分類されることになります。
しかし、70歳以上の45%の方が必要もない血圧降下剤を一生服用しているとしたら、ことは重大です。
薬には必ず副作用があります。
実は、血圧降下剤は必要以上に血圧を降下させる結果、血流が脳まで円滑に届かず、脳梗塞や認知症になる可能性が疑われています。

医療費も問題もさることながら、その基準値に基づいて処方せざるを得ない現場の善良な医師の方々の立場も複雑でしょう。
日本人間ドック学会と健康保険連合会の発表は元の数値に戻しただけなのです。
日本医師会に公然と盾突いた勇気こそ賞賛されるべきです。

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