敢えて争点を探せばアベノミクスの総決算ということでしょうか。
しかし、第三の矢が不発に終わることはほぼ当初からの想定通りです。
経済政策がはっきり言って焦点ぼけでした。
第三の矢の答えは日本の産業構造を考えれば簡単に導けると思います。
つまり、日本のGDPの60%はサービス産業で成り立っている以上、サービス産業の高付加価値化なくして成長戦略は成り立たないのです。
そこに焦点を合わせた経済政策こそが肝心です。
つまり、“経済成長率=△GDP=△労働力人口+△生産性”で表されます。
日本は人口減少社会に突入している以上、△労働力の増加は、女性労働力や定年延長程度では到底期待できません。
移民の段階的緩和か、または建設労働者や介護補助従事者に限って例外的に5年の滞在を認めるなどをしない限り、今後マイナス要因であることは間違いありません。
つまり、労働生産性の向上しか経済成長の源泉になり得ないのです。
従って、GDP最大のサービス産業の労働生産性の向上なくして日本の持続的成長は期待できないということになります。
そこで、私は、サービス産業の中でも観光業と医療産業に注目しています。
世界の観光業と医療産業はそれぞれ600兆円を超えています。
日本はそれぞれ23兆円と40兆円程度とまだまだ伸び代は極めて大きいのです。
しかし、最近、良い兆候が見え始めています。
外人旅行者が大きく増加しています。
昨年悲願の1000万人大台を初めて突破し、今年は1300万を超える勢いです。
政府はオリンピック年の2020年に2000万人を目標にしていますが、恐らく前倒しで達成されることでしょう。
私見ですが2025年には3000万人の外国旅行者数が予想されます。
最も、ホテル、バスの運転手などのインフラ整備が条件ですが。
今年10月までの来日外国人のトップ3は、台湾(238万人+26%)、韓国(224万人+7%)、中国(201万人+80%)となっており、この3国で約60%を占めています。
特に、急増中の中国からは来年は300万人の来日が予想されます。
一方、お隣の韓国には昨年既に430万人の中国人が押し寄せています。
総外人旅行者総数では、来年は1500万人を超え、日本の海外旅行者数(1750万人、2013年)との逆転が2016年から2017年にかけて達成されるはずと予想しています。

その急増する外国人観光客と医療産業の組み合わせこそが医療ツーリズムです。
全世界で約1000億ドル(12兆円)と言われていますが、日本への医療ツーリズムは人間ドックを中心に年間数万人程度と微々たるものです。
真剣に取り組んでいるのは築地の聖路加病院など数える程度です。
しかし、漸く民間病院に加え、地方自治体や主要大学病院が重い腰を上げようとしています。
今後がん治療のための重粒子線治療などアジアからの患者の受け入れが本格化することでしょう。
しかしながら、最大の問題は言葉の障害です。
実は、タイ(252万人)やマレーシア(64万人)など東南アジアの方が既に医療ツーリズム先進国です。
特に、バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(GGH)という病院グループは、タイの上場会社ですが、その時価総額は1兆円を超えています。
20%を保有するオーナー社長のプラサートーンオーソト氏(81)はタイ長者番一位ですが、持ち株だけで2000億円の資産価値を超えています。
その病院は150名の通訳を抱え26ヶ国語に対応し、世界から毎年20万人が押し寄せています。
日本は、まずタイやマレーシアの病院から謙虚に医療ツーリズムを学ぶべきでしょう。
日本の最先端の医療技術と看護サービスをアピールすれば国際競争力はかなり高いものと思います。
そのためには、規制緩和と旧体質を打ち破る革新的な経営者が多く出現することや、所有と経営の分離、即ち医療REITの拡充で設備・医療機械の近代化、人材の充実を図ることが肝要だと思います。
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